この本格的な戦争映画は表向きには戦争をリアルに描写している一方で、アメリカのプロパガンダ的な言説を再現しています。この映画のストーリーは、イラク中部の都市ラマディにある、敵に包囲された一軒の民家で展開されます。政治・歴史的な視点を完全に排除したこの閉鎖的な枠組みは、戦争を個人的な感情体験へと矮小化しており、アメリカ兵が現実とは裏腹に、勇敢ながらも抑圧された、状況の犠牲者という存在として描かれています。
敵は顔も正体もなく、米軍の暴力がいかにも不可避な反応として提示されています。自軍を人間化し、他軍を悪魔化するというこの手法は、プロパガンダの古来的な原則に則った倫理的・政治的判断の下地を全く提示していません。
この映画は露骨なスローガンこそ避けているものの、兵士たちの苦痛と恐怖をリアルに描写することで、アメリカ兵に対する視聴者の共感を誘っています。結局のところ、『Warfare』は一見するとドキュメンタリー調ながら、長年アメリカの戦争映画が力を入れてきた介入主義的な物語を再現していると言えます。
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